教育実践者が語る「こうでないといけない」からの脱却
子どもと適切な距離感で接したいと考えている親は少なくありません。しかし、その距離感がつかめずに悩んでしまうのではないでしょうか。ここでは、いい距離感を作るために必要な考え方について紹介します。
本稿は、「ベネッセ教育情報サイト」を元にまとめました。参考ページは以下の通りです。
https://benesse.jp/kyouiku/202202/20220218-1.html
https://benesse.jp/kyouiku/202202/20220226-2.html
https://benesse.jp/kyouiku/202203/20220306-1.html
必要なのは子どもの存在が受容される場所
都市部に住む子どもたちには、「同居する祖父母の存在がない」「自然が身近にない」など、自分をそのまま受け入れてくれる存在が近くにない環境で育っています。
近所の人との関わりも少なく、親や塾の先生など、限定的な人間関係の中で「期待に応えたい」と常に緊張状態になっている子どもも多くいるでしょう。
子どもにとって、その存在がまるごと受容される場所が必要です。それは、他者との優劣とは関係がない場所であり、必ずしも親である必要はありません。
学校はどうしても学力やスポーツ、協調性など、何かの価値観によって優劣が常につけられてしまいがちです。しかし、そうではない学校も増えてきています。そうした学校を選ぶのもひとつの考え方と言えるでしょう。
全受容される場所というのは、「帰る場所」です。帰る場所があるから、安心して様々なことにチャレンジができます。何らかの価値観で勝敗が決まる「緊張感がある場所」とのメリハリもつけられるでしょう。そして、勝負に負けてもそれ自体を受け止めてくれる場所があることで、健全な成長が促されます。
周りの環境すべてが受容体制である必要はありません。大人になれば、様々なプレッシャーにさらされることになるからです。社会は、毎日のように何らかの勝敗が決まります。そうしたプレッシャーや勝敗の結果に対して、一人で深刻に受け止める必要がない環境がどういう場所かを考えてあげましょう。誰かと一緒に受け止めることや結果が関係ない場所に身をおくことの大切さを学ぶと、自分の基盤がしっかりした子どもが育ちます。
特に小学生は関わる人が限定的です。「こうするべき」と言われたことの影響を受けやすい傾向があります。親や学校教育の中で、絶対的な号令として指示を出すことが必ずしもいいこととは限りません。
子どもの中には、大人の指令に疑問を持つ子もいます。しかし、ほとんどの子どもは疑問を持たずに受け取ってしまうでしょう。親が常に近くで指示をするのではなく、少し距離を置いて見守り、自分で考え、行動できるようになることが大切です。
デジタルは「超える」ことができるもの
全国の小・中学校でタブレット端末の利用など、デジタル化が進んでいます。しかし、授業中に端末を使う割合は、地域や教科による差がまだ大きいのが現状です。家庭学習では、2~3割の活用率とのデータも出ています。
こうした現状を打破するには、大人がデジタルの特性を理解する必要があるでしょう。
デジタルの特性は「超える」ことです。時間や空間を超えて、誰とでもいつでもつながり、様々なことを学べるのがデジタルの強み。興味がある職業の人にオンラインで話を聞いたり、海外の人と話をしたりといった様々なことができます。
デジタル化というと、ツールの使いこなし方やセキュリティ教育、プログラミング学習など、詰め込み型の学習をさせようとする大人が多いです。しかし、「デジタルは超えるもの」という魅力を伝えることこそが本質ではないでしょうか。
子どもは好奇心旺盛なもの。基本的な操作を教えれば、自分で学び、分からないことを自主的に質問してきます。子どもを信頼して、タブレット端末などを満喫させましょう。
親はタブレットをゲームや動画など、「遊びのツール」という先入観をもっていることが多いです。自由に使わせることを躊躇する人もいます。
デジタルは、もっと深いものです。親世代では遊びにしか使えなくても、子どものころから親しんでいれば、遊び以上に活用できます。
もし、遊び用ツールと考えているなら、親も子どもと一緒に学び、その先入観を変える必要があるかもしれません。現状は大人世代がデジタルに対する理解が少なく、上手く活用できていないため、大人のデジタルスキル向上が求められています。
これからの価値観とは?
日本では「こうでないといけない」という考え方が蔓延し、親が疲弊していしまっているのではないでしょうか。親自身の社会生活も不安定です。そんな中で、子育ても漠然と不安をかかえてしまっているかもしれません。
不安の原因のひとつが他人との比較による「こうしなければいけない」「こうあるべき」という考え方です。たとえば、SNSの情報を見て、他の親と比較して落ち込む親も少なくありません。
目指したい親子関係や子どもにこうなってほしいという期待があるのは仕方ないことです。しかし、子どもには子ども固有の性格があり、意志があります。親がいくら最良の選択をしたと思っても、子どもがどう受け取るかは分かりません。
「こうあるべき」という考え方自体には、意味がないことを理解しましょう。
親はゆとりをもって、自分がもっと人生を楽しんでもいいのではないでしょうか。頑張りすぎると視野が狭くなってしまうかもしれません。また、子どもは、親が人生を楽しむ姿や勉強を楽しむ姿を見て、学ぶ楽しさを知ります。子どもに手をかけすぎず、少し離れた距離感で自立を促すくらいでちょうどいいのです。
これからの価値観は、「こうしなければいけない」という周囲を基準にしたものではなく、周囲の目を気にせずに「自分が今を楽しむ」というものにシフトしていくでしょう。
まとめ
親は子どもの近くで、すぐに手を差し伸べたくなるかもしれません。しかし、一歩離れた場所から見守るくらいがちょうどいい距離感です。子どもにとって必要なのは、正しい指示をくれる大人ではなく、「存在そのものを受容してくれる場所」です。子どもにとってそのような場所があるかをぜひ観察してみてください。親は、周囲と比較せず、子どもと一緒に楽しく学ぶことを大切にしてみてはいかがでしょうか。
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